時代背景を背負った家とは
私は家を建てるときは常々、
家が時代背景を背負わないようにと心がけています。
時代背景を背負った家とは、
竣工から数年経った家を見て、
「この家は〇〇年前につくられた家だね」、
「そういえば、このメーカーのサッシが流行っていたな」
と、ひと目で分かってしまう家のことです。
これは、いわゆる私の職業病なのですが、
皆さんもお心当たりがあるのではないでしょうか?
住宅をファッションに例えてみると、
「80年代に流行ったファッション」、
「昔は皆、こんな髪型してたよね」というように、
そのもの自体に時代背景が染みついているため、
見た瞬間におおよその年代がわかってしまいます。
もちろん、当時は多くの人が良いものだと思っていましたし、
周りを見渡せば、皆がそれを着ていました。
ですが、今では誰も着ていないばかりか、
古臭さや違和感を覚えることのほうが多いでしょう。
注文住宅も同様で、数年単位で流行があります。
今は皆が良いものだとしているものでも、
5~6年もすれば過去のものとなってしまいます。
やっかいなことに、洋服と違って、
流行が変わるたびに買いなおすことができません。
「昔の家だから…」と言って諦める人がいる一方で、
わざわざリフォームまでする人もいます。
実際、私もリフォーム大工をしていた時期があり、
多くのお客さんから依頼を受けてきました。
雨漏りや床の歪みなどの、
実害を受けてのリフォームもありますが、
そのついでに壁を張り替えたり、
内装を一新したいという依頼が多いと感じます。
これは、家に染みついた時代背景を変えたい
という願望以外の何ものでもありません。
せっかく自由な注文住宅を選んでいるのに、
非常に勿体ないことだと思います。
ライフスタイルと調和した住宅デザイン
住宅の流行が数年単位で変化していく一方で、
いつまでも家に愛着をもって暮らしている人がいます。
結論から言えば、
こうした人は流行にとらわれることなく、
「自分の望む家とは何か?」を追求して家を建てた人です。
ここで、よく勘違いをしてしまいがちなのは、
そういった愛着のもてる家を建てるには、
個性的なデザインであるとか、
たくさんのお金が必要だという思い込みです。
目新しさや個性的なデザインに注力した
住宅は数多く存在しますが、
2回も見れば何の感動もなくなり、飽きてしまいます。
万博やオリンピック開催時の建築が良い例で、
莫大な費用を投じて建てられた個性的な建築物が、
わずか数年で忘れ去られ、取り壊されています。
住宅のデザインは、そこに住む家族にとって、
生涯に渡って実益のあるものでなければなりません。
たかが数年、早ければ数週間で飽きてしまうような
個性や目新しさなど、家には必要ないのです。
現代の住宅が高い理由は、
家の中に無駄な要素があまりにも詰め込まれているからです。
空間の有効活用と称して、隠し収納やロフトなど、
目新しさを売りにしている住宅会社もありますが、
そこに暮らす家族にとって、本来必要がない要素であれば、
数年後には使われないスペースと化します。
自宅の中に使わなくなった空間、設備機能、
見飽きてしまった装飾が増えるにつれ、
家に対して心理的な不満感が募っていきます。
生涯、愛着のもてる住宅デザインというのは、
そこに住む家族の価値観に基づいた、本質的な要望を反映し、
ライフスタイルと調和した無駄のないデザインであるべきです。
家の中をすみずみまで管理することができ、
自分のためにデザインされた家だと感じるたびに、
家に対する愛着は、むしろ年々大きくなっていくのです。
一生涯愛着のもてる家を建てるには
こうした住宅デザインは、
本来プロである住宅会社側が考え、提案をするべきものですが、
そういった会社は非常に少ないのが現状です。
お客様一人一人にたいして
いちいち時間をかけていては、会社の利益になりません。
各項目ごとに、数パターンの選択肢を用意して、
折り合いをつける形でプランを作成することがほとんどです。
一見親切そうに見えて、ただ効率的に仕事をしているに過ぎません。
当サイト内で何度もご説明していることですが、
住宅会社に任せるだけでは、決して良い家は建たないのです。
生涯愛着のもてる家を建てるためには、
自分と家族にとって、
「家に求める譲れない要素は何か」を考えることが大切です。
アイデアが浮かばなければ、住宅雑誌を読んだり、
実際にいくつか提案を受けてみるのも良いでしょう。
参考材料を増やしながら、要望を明確にしていくのです。
魅力的に感じる提案や事例を目にしたら、
「一時的な感情のせいではないか?」
「本当に自分と家族にとって必要なものなのか?」
と自分に問いかけるようにしてください。
長期的にみて無駄だと感じれば排除をし、
必要だと思う事例は書き留めておきましょう。
こうしたプロセスを経てまとめた要望を手に、
最もイメージが近い提案をしてくれている
住宅会社と協力して打ち合わせを進めることで、
歳を重ねるごとに愛着がましていく、
一生涯愛着のもてる家を建てることができるようになります。