家の住み替えでは、特別控除や軽減税率、買い替え特例などの税制優遇を受けることができます。買い替え特例はマイホームを2025年12月31日までに売った場合に適用されるので、注文住宅への住み替えは今がお得です。
この記事では家の住み替えで受けられる税制優遇や注文住宅へ住み替えるメリット・デメリット、建売住宅や分譲マンションから注文住宅へ住み替える流れについて解説します。
家の住み替えで税制優遇が受けられる

家の売却時に利益が出ると譲渡所得税がかかりますが、その際に受けられる税制優遇が3つあります。家の購入時の住宅ローン控除と合わせて、家の住み替えで受けられる税制優遇は以下4つです。
- 3,000万円の特別控除
- 軽減税率の特例
- 買い替え特例(2025年12月31日まで)
- 住宅ローン控除
それぞれについて解説します。ぜひ活用して、節税につなげてください。
①3,000万円の特別控除
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。特例の適用を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 家が実際に居住していたマイホームである
- 以前に住んでいたマイホームや家屋を取り壊した後の土地を売却する場合、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 買主が親子や夫婦、生計をともにしている親族ではない
- 売却の前年・前々年に他の特例を受けていない
- 売却の前年・前々年に住宅ローン控除を受けていない
②軽減税率の特例
10年超所有したマイホームを売って、一定の要件に当てはまれば、譲渡所得の税額計算で軽減税率を適用できます。この特例では、譲渡所得にかかる本来の税率である20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が、6,000万円までの部分では14.21%(所得税10.21%、住民税4%)に軽減されます。
特例の適用を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 家が実際に居住していたマイホームである
- 以前に住んでいたマイホームや家屋を取り壊した後の土地を売却する場合、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 売却した年の1月1日において所有期間が10年を超えている
- 買主が親子や夫婦、生計をともにしている親族ではない
- 売却の前年・前々年に同じ特例や他の特例を受けていない
軽減税率の特例は、「3,000万円の特別控除」と併せて利用できます。
参考:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
③買い替え特例(2025年12月31日まで)
特定のマイホーム(居住用財産)を、令和7年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。
これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。
例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。この制度を図で説明すると次のとおりです。
(注)説明を簡潔にするため、減価償却などは考慮していません。
上記の例により説明すれば、課税が将来に繰り延べられるとは、例えば、買い換えたマイホームを将来8,000万円で売却した場合に、売却価額8,000万円と購入価額7,000万円との差額である1,000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に対して課税されるのではなく、実際の譲渡益1,000万円に特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4,000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5,000万円が、譲渡益として課税されるということです。
出典:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
特例の適用を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 実際に居住していたマイホームを2025年12月31日までに売る
- 以前に住んでいたマイホームや家屋を取り壊した後の土地を売却する場合、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- マイホーム売却に関する他の特例を、売った年とその前後1年間に受けていない
- 売却代金が1億円以下である
- 売主の居住期間が10年以上であり、所有期間も10年を超えている
- 購入する家の築年数や床面積・土地面積、耐震基準が規定を満たす
- 買主が親子や夫婦、生計をともにしている親族ではない
- マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い替える
買い替え特例は「3,000万円の特別控除」や「軽減税率の特例」と併用できません。また、旧居の売却金額よりも新居の購入金額が低い場合には、差額分が課税されます。
買い替え特例を利用すれば、住み替え時の税負担を抑えられるため、住み替え時の資金を用意しやすくなります。2025年12月31日までの売却が対象であるため、注文住宅への住み替えは今がお得といえます。
④住宅ローン控除
住み替え時のマイホームの購入に住宅ローンを利用する場合、住宅ローン控除(住宅ローン減税、住宅借入金等特別控除)を適用できる可能性があります。
住宅ローン控除とは、年末時点における住宅ローン残高の0.7%分の税額を所得税(一部、翌年の住民税)から控除できる制度です。新築住宅なら3,000万円まで、中古住宅なら2,000万円までが借入限度額です。長期優良住宅や低炭素住宅なら、新築・中古に関わらず、借入限度額が上がります。新築の控除期間は13年、中古住宅の控除期間は10年間です。
子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額の引き上げ措置や、新築住宅の床面積要件において、40㎡以上50㎡未満の新築住宅も対象とする緩和措置が2025年12月31日まで実施されるので、対象者は住宅ローン控除の観点からも、注文住宅への住み替えは今がお得といえます。
参考:No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
住宅:住宅ローン減税 – 国土交通省
注文住宅へ住み替えるメリット・デメリット
メリット
建売住宅や分譲マンションから注文住宅へ住み替えると、より自由度の高い間取りやデザインのマイホームを実現できます。家の住み替えでは税制優遇が受けられるので、費用が高くなりがちな注文住宅を建築する資金も捻出しやすいです。
こだわりの家を手に入れたい方には、注文住宅の建築をおすすめします。
デメリット
注文住宅は建売住宅や分譲マンションに比べて、コストが割高になりがちです。土地探しから引き渡しまでの期間も半年から1年半ほどかかります。また、注文住宅では住宅ローンの手続きが複雑になるというデメリットもあります。
住み替えでは売りと買いの「同時決済」を目指す

建売住宅や分譲マンションから注文住宅へ住み替える際は、旧居の売却と新居の購入を同時に行い、旧居の引き渡し日と新居への入居日を同じ日にする「同時決済」が理想的です。同時決済なら、仮住まいは必要ありませんし、二重で住宅ローンを負担する期間も生まれません。
同時決済が難しい場合の住み替えのパターンは、先に旧居を売る「売り先行(売却先行)」と先に新居を買う「買い先行(購入先行)」に分けられます。それぞれのメリット・デメリットを解説します。
売り先行のメリット・デメリット
売り先行は先に旧居を売るため、売却代金をそのまま新居の建築・購入資金に充てることが可能で、資金計画が立てやすいというメリットがあります。
また、金額や条件を妥協せずに旧居を売ることができるのも売り先行のメリットです。買い先行だと、旧居を早く売るために売却金額や条件を妥協しなければいけないこともありますが、売り先行ならじっくり買主と交渉しながら、より納得のできる金額や条件で売却の手続きを進めることができます。
売り先行のデメリットは仮住まいが必要になることです。早めに退去を済ませ、住んでいる人がいない状態で内覧できるようにした方が物件は売れやすいため、売り先行では仮住まい(新居に入居するまで住む賃貸物件)を用意することが一般的です。仮住まいの用意には余計な引っ越しの手間や費用、敷金・礼金といった初期費用、月々の賃料といった負担が生じます。
仮住まいを必要とせず、旧居に住んだまま売却を進める場合でも、内覧に対応しなければならないというデメリットがあります。
買い先行のメリット・デメリット
買い先行は先に新居を建築・購入し、新居に入居できるため、仮住まいの必要がないことがメリットです。
買い先行のデメリットは早く資金を用意するために、旧居の売却金額や条件で妥協しなければいけない可能性があることです。また、旧居と新居の二重で住宅ローンを負担する期間ができてしまう場合や、新居の購入資金を金利や手数料が割高である「つなぎ融資」で調達しなくてはならない場合があることも、買い先行のデメリットです。
建売住宅や分譲マンションから注文住宅へ住み替える流れ

建売住宅や分譲マンションから注文住宅へ住み替える流れは、新居の土地をすでに持っているかまだ持っていないかなどによって変化しますが、同時決済を目指す場合は、概ね以下の通りです。
- 旧居の売却活動開始
- 注文住宅の予算の検討
- 情報収集、イメージづくり、希望条件の整理
- 土地探し(土地を所有していない場合)
- 工務店・ハウスメーカー選び
- 間取りの設計・見積もり、住宅ローンの仮審査
- 旧居の売却確定
- 工事請負契約の締結、住宅ローンの本審査
- 建築プランの詳細打ち合わせ
- 着工
- 完成・引き渡し・同時決済
注文住宅の建築・購入の検討から完成までにかかる期間は、一般的に8ヶ月から15ヶ月程度です。それぞれのステップについて解説します。
①旧居の売却活動開始
複数の不動産会社に旧居の売却査定を依頼し、査定結果や相性を考慮して、売却活動を委託する不動産会社を決めます。仲介だけでなく、買取もやっている不動産会社に査定を依頼すれば、すぐに旧居を売却し、新居の建築・購入資金を得ることも可能です。
物件の売却にかかる期間は、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度です。
②注文住宅の予算の検討
旧居の住宅ローンの残債を正確に把握し、売却金額の見通しを立てて、新しいマイホームとなる注文住宅の予算を検討します。貯金や新しく住宅ローンを組んだ際の毎月の返済額などを加味して、綿密に資金計画を立てます。
③情報収集、イメージづくり、希望条件の整理
インターネットで調べたり、家族・友人・知人の話を聞いたり、工務店・ハウスメーカーのカタログを請求したり、モデルハウス・住宅展示場を見学したりして、情報収集を行います。集めた情報と自身のライフスタイルやキャリアプランを照らし合わせ、外観や内装、広さ、間取り、居住エリアなどのイメージを固めていき、希望条件を整理します。
情報収集や希望条件の整理を行う中で、こまめに注文住宅の予算を検討し直すことも重要です。
④土地探し(土地を所有していない場合)
新居を建築する土地を持っていない場合は、土地探しを行います。基本的にインターネットを調べたり、希望エリアに実際に足を運ぶことで土地探しを行いますが、旧居の売却活動を委託した不動産会社に土地探しも依頼できる可能性があります。
土地探しと工務店・ハウスメーカー選びを並行して行えば、土地と建物の予算のバランスを取りやすいです。土地探しを協力してくれる工務店・ハウスメーカーもあります。
⑤工務店・ハウスメーカー選び
収集した情報をもとに、注文住宅の建築を依頼する工務店・ハウスメーカーを数社に絞っていきます。住宅会社とは長い付き合いになるため、見積もりや技術だけでなく、担当者の質や相性も重要です。
⑥間取りの設計・見積もり、住宅ローンの仮審査
ある程度、新居の建築を依頼したい工務店・ハウスメーカーを絞ったら、各社に間取りプランの設計と見積もりを依頼します。依頼時には予算やイメージ、希望条件を詳細に伝えることが大切です。提示されたプラン・見積もりを比較して、契約する1社を選びます。
間取りプランや見積もりが明確になった段階で、住宅ローンの仮審査に進みます。
⑦旧居の売却確定
旧居を引き渡すタイミングが新居の完成後でも問題ない買主が見つかったら、売買契約を結び、旧居の売却を確定させます。
⑧工事請負契約の締結、住宅ローンの本審査
新居の建築を依頼する工務店・ハウスメーカーを1社に絞り、工事請負契約(本契約)を結びます。締結後は正式な図面など多くの書類の提出が必要な住宅ローンの本審査に進みます。
⑨建築プランの詳細打ち合わせ
間取りや外観、内装、住宅設備、建材、建具、エクステリア(外構)などの建築プランの詳細について、住宅会社と打ち合わせを行います。建築プランの詳細をもとに、工務店・ハウスメーカーは正式な建築許可を得るために、自治体に「建築確認申請」を行います。
⑩着工
住宅ローンの本審査が通り、自治体から建築許可が下りたら、いよいよ着工です。着工直前には、工事の無事と安全を祈願する儀式である「地鎮祭」を行うことが多いです。建物の骨組みが完成した際には「上棟式」を開催することもあります。
⑪完成・引き渡し・同時決済
工事が完了し、建物が完成したら、工事責任者による確認や建築確認申請に基づく自治体による検査が行われます。新居の引き渡しまでに旧居の売却代金が入金され、旧居の住宅ローンを完済します。
施主(依頼主、ハウスオーナー)立会いのもとの新居の最終確認が済んだら、新居の引き渡しが行われ、新居の住宅ローンが実行されます(銀行から住宅会社への入金が行われます)。
新居に引っ越したら、旧居を買主に引き渡します。
まとめ:注文住宅への住み替えは今がお得
- 家の住み替えでは、買い替え特例を2025年12月31日まで適用できる
- 注文住宅は間取りやデザインの自由度が高い
- 住み替えでは売りと買いの「同時決済」を目指す
- 注文住宅の完成には、8ヶ月から15ヶ月ほどかかる
買い替え特例を2025年12月31日まで適用できるので、建売住宅や分譲マンションから注文住宅へ住み替えるなら、今がお得です。
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