ある大工道具屋にて、珍しい鉋を見つけました。
年代物の『永弘』です。
店主いわく、「ゴミみたいなもので売り物にはならない。」とのことで、
安く譲ってもらいました。
知り合いの鍛冶屋さんに見せてみたところ、
100年近く前の作だということが判明。
それにしても、昔の職人は道具を使い込むものです。
鋼の粒子も細かいので、よく切れるのでしょう。
さっそく切れ味を試してみたいところですが、
汚い状態の道具を使うのは失礼なので、
整形して使うことにしました。
手で錆を落とし、おおよその寸法を決めたら、
様子をみながら鑢で形を整えていきます。
薬品や熱を加えると鋼の組織が壊れるので慎重に。
大まかな整形が完了しました。
ここから、さらに細かく砥石などで形を整えます。
その後、裏を叩き出します。
厚みの調整と裏出しが終わった状態です。
裏透きの中心付近であることや、
地金を落としたことで鋼が動き、狂いが生じているため、
そのまま刃研ぎをすると刃先が波打ってしまいます。
裏出しは鉋身の狂いをとりながら、慎重に行う必要があります。
刃研ぎが済んだら仕込みます。
今回は立鉋にすることにしました。
ここまでくると、様になりますね。
この世に二つとないであろう『永弘の立鉋』の完成です。
鍛冶職人のすごいところは、
刃物を打ってから、何十年と経った現在でも、
その実用性を保ち続けていることです。
100年前の職人の道具を使って仕事ができるというのは、
なんだか感慨深いものです。
私もこれに倣って、よりいっそう仕事に励み、
長く住み継がれるような家を建てられるよう
精進していこうと思います。
古い大工道具の再生
